民法上、期間の定めのない労働契約については使用者は何時でも労働者を解雇できることができる。使用者による労働者の解雇事由を制限する規定はありません。

 しかし、解雇は通常、労働者の生活を直ちに危機に陥らせるものであり、使用者の恣意的な解雇から労働者を保護するため、判例は使用者による解雇の事由を制限している。言い換えると、解雇が有効とされるためには、解雇権の濫用とみなされないだけの正当な理由が必要とされることになる。

 雇用調整の中で解雇は最終的に行われるもので、それ以前に種々の対策を行うことが必要である。一般的な雇用調整方法は次の順に行われる:

(間接的雇用調整)
 1.配置転換
 2.一時帰休
 3.出向
(直接的雇用調整)
 4.転籍
 5.退職勧奨
 6.指名解雇

 

整理解雇は企業が経営上の必要から余剰の労働者を解雇することにより雇用調整を行うもので、主として使用者側の事情によるものである。従って、整理解雇の場合には解雇権の濫用を防止するため、判例から「四つの要件」が必要であるとされる:

(1)       人員削減の必要性:人員削減の実施が不況、経営不振などにより企業経営上の十分な必要性に基づいていること、又はやむを得ない措置と認められることが必要。

(2)       解雇回避努力:人員削減を実施する際には、使用者は配置転換、一時帰休、出向、希望退職の募集など他の手段によってできる限り解雇を回避するための努力をすべきであるとされる。配置転換、希望退職の募集など他の手段を行わず、いきなり整理解雇を実施した場合は解雇権の濫用とされる可能性が大きい。

(3)       被解雇者選定の合理性:労働者の整理解雇がやむを得ないと認められる場合であっても、被解雇者の選定は客観的で合理的な基準を設定し、公正に適用して行うことが必要。この基準として認められるものは、欠勤日数、遅刻回数、規律違反暦などの勤務成績や勤続年数などの企業貢献度、経済的打撃の低さ(例:30歳以下の者など)など。

(4)       手続の妥当性:使用者は、労働者に対して整理解雇の必要性とその時期・規模・方法等について、誠意をもって協議し、その納得を得るよう努力する必要がある。

 

「四要件」を満たさない整理解雇に対して、被整理解雇者は次のような対応をとりうる。

(1)   会社に対して「辞めない」とはっきり明言し、1人でも入れる労働組合に加入し、話し合いを要求する。

(2)   労働基準監督署に相談する。

(3)   訴訟を起こす。